『マネーの代理人たち ウォール街から見た日本株』を読んだ感想

皆様こんにちは、takahiroです。

 

昨日、この本を読了しました。

 

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元フジテレビキャスターで、ペンシルバニア大学ウォートンMBA、米国の投資運用会社で働いた経験もある女性が書いたものなのですが、結論を言うととても興味深く面白かったです。

 

今日は、読んでみた感想をつらつらと述べていきたいと思います。

 

 

機関投資家だって、僕達と同じ人間である

機関投資家というのは、顧客のお金を預かってそれを運用することを仕事にしている、いわゆるプロと呼ばれる投資家を指します。

 

プロの投資家と言うと、僕達は頭が良くて計算高い、見るからにエリートで出世街道まっしぐらな、自分とは生きてる世界が違う人間とイメージする人も多いかもしれません(僕もそんなイメージでした。)

 

しかし、実際に投資運用会社内部で働いていた著者は、これをハッキリと否定しています。

 

彼女いわく、

 

「彼等も自分の家庭を持ち生活するために必死に働いていて、常により良い成績を出そうと努力し戦っている普通の人間」であり、巨額の資金を運用しているとはいえ、それは他人の資金で、あくまで『マネーの代理人』に過ぎないというのです。

 

だから成功する時も失敗する時もあるし、様々な人間模様があるし、正しくない判断をする時もある。

 

一部の人達が抱いているお金に強欲ながめつい人間もいるかもしれないが、決してそんな人間ばかりがいるような世界ではない、と。

 

僕は投資運用会社で働いたことはないですし、機関投資家の方とお話したこともありませんが、この本を読んでいるとそれがとてもよく分かりました。

 

投資を生業にしている機関投資家といえども、所詮は投資世界の歯車の1つであり、彼等が牛耳って全てをコントロールできるわけではないのです。

それができるなら、みんな彼等にお金を預けて自分達は何もしなくてよくなりますからね。

 

その認識を持つことは、個人投資家としてやっていくにあたり大切だと思いました。

 

 

他人のお金を預かり運用するプロだからこそのジレンマ

著者によると、『マネーの代理人』である機関投資家は、これが仕事であり動かす資金が巨大だからこそできないことも多いと述べています。

 

顧客とはお金を預かり運用するにあたり契約書を交わしているのですが、ここには大抵の場合「現金として保有できるのは、預かり資産の○○%以下」というような事項があるらしいのです。

 

これはどういうことかと言うと、現時点で株や債券などの証券に投資することがとても危険(損失を出す可能性が高い)状況であっても、どこにも投資をせずに保有したままにすることができる金額に限界がある、と。

 

つまり顧客からすると、「こっちが金預けて高い手数料払ってんのはそれ以上に金を増やしてもらうためで、それを投資せずに保有したままにするなんてただの怠慢だ!」と捉えられ、自分の会社からは「お前の仕事は投資して顧客のお金を増やすことだろう、それをせず保有したままなんて使えないヤツだ!」と捉えられる。

 

たとえ「今は投資をしないことが最善策」だと思っても、それができないのです。

 

個人投資家は自分のお金を運用しているので「今は投資しない方がいいな」と判断したらそれでいいのですが、機関投資家はその選択肢が封じられています。

 

また、運用する資金が高額なので、ある銘柄に投資するとそれ自体が株価を乱降下させる原因となるかもしれず、相場が不安定になり損失を生み出す恐れもあります。

 

自らの行動が自らを成功へと導くか墓穴を掘るハメになるのか、常に大きなチャンスとリスクを抱えているそのプレッシャーは半端ないものだろうと思います。

 

プロである機関投資家は、実は様々な制約を受けていることがよく分かります。

 

 

マネーを正しい場所に、正しい量で、正しく流れるように

著者は『マネーの代理人』である彼等は(少なくとも彼女が見てきた彼等は)、「お客さんのお金を増やしてハッピーにさせて、それで自分のお給料も上がってハッピーになれる仕事」だと自負し誇りを持って働いている人もいれば、世間のイメージ通りお金にがめつく欲深い人もいると述べています。

 

そしてそんな彼等を含め、投資の世界で巨大なお金を動かす時は『恐怖と強欲』がそこにあるのだ、と。

 

そうすると、本来お金が入るべき場所に流れず、逆に既に十分入っている場所により流れてしまい偏りが生まれ、いびつな形になってしまいます。

 

しかし、それは短期的に見れば良いかもしれませんが長期的に見ると市場そのものを壊してしまう危険性を秘めています。

 

『マネーの代理人』を評価するシステムは、ほとんどが短期的な目線でしか評価しておらず、だから彼等は目先の利益を上げようと躍起になるようなのですが、そうではなく長期的な目線で評価するシステムに変更し、市場が今より良い世界になるようにする必要があると著者は主張しています。

 

目先の利益を追った結果、思わぬ大きな損失を出してしまうのは僕達個人投資家も同じだと思います。長期的な目線を持って投資を行うことが、自分をハッピーにする秘訣だとこの本は訴えているように感じました。

 

 

まとめ

冒頭では「専門用語はなるべく使わないことを心掛けた」という記述があるのですが、内容の性質上調べないと分からない(単語を聞いたことはあってもその意味が曖昧)なものが結構あったので、投資を始めたばかりの初心者には少し難しいなとは思いましたが、それでも読む価値は十分にある一冊です。

 

投資運用会社で働くプロの投資家である人々の実状が書かれているので、とても視野が広がります。

 

何事もそうですが、彼を知り己を知れば百戦殆うからずです。

機関投資家は敵ではありませんが、それでも僕達と同じ投資をしているのはどんな人達なのかということを知るのは、決して損はありません。

 

投資をしている人は、ぜひ読んでみてください。