資本主義経済とは何なのか~『チャイナ・ブーム 一攫千金の夢』の感想~

皆様こんにちは、takahiroです。

 

NETFILIXにて配信されている『チャイナ・ブーム 一攫千金の夢』というドキュメンタリー映画映画を観ました。

 

アメリカで制作されたもので、日本では2018年に公開された本作は、リーマンショック後のアメリカの投資家達が中国企業に投資を始めた理由や経緯が描かれています。

 

この作品を観ていて感じたのは、資本主義経済の取り繕いようがない闇でした。

本日はこの映画の感想を交えつつ、それをお話していきます。

 

 

"逆さ合併"により続々と米国市場に上場した中国企業

リーマンショックによって、世界の株式市場は暴落しました。そのため投資家達は投資をしようにもする場所が無く途方にくれていました。

 

そんな中で、中国だけは目覚ましい成長の兆しが見えており、アメリカの投資家達は目を付けます。

 

しかし、中国企業にはアメリカの投資家が直接投資をすることが制度上できないため、考えた策が「だったら、米国市場に上場させれば投資ができる!」というもの。

既存の『米国市場へ上場しているけれど経営実態のない企業』と合併させ、中国企業を無理やり市場に参加できるようお膳立てし、投資家達は投資を行います。

 

このようなやり方を逆さ合併と言うらしいのですが、相変わらず人間は利益のためなら手段を選ばないということが分かります。

 

法律的に違法ではないものの、経営実態の無い企業を利用して上場させるというのは、倫理的にはアウトです。でも、それと引き換えに投資家はじめアメリカ経済は潤うことになる。

 

利益が倫理をないがしろにするのは今に始まったことではありませんが、それでも観ていて気持ちのいいものではありませんね。

 

 

食い物にしていたはずが、食い物にされていた

しかしそれからしばらく経った後、次第に上場している中国企業の実態に気付く人達が現れます。

 

企業を現地視察したり企業の玄関口にカメラを設置し1年ほど調べたところ、とてもじゃないけれど公開されている書類に記載されているような莫大な利益をあげている雰囲気は感じられなかったのです。

 

つまり、書類上にある目覚ましい成長を続けている中国企業などどこにも存在しなかったのです。

 

それに気付いた人達は世に訴えかけますが、誰も見向きもしない上に、中国企業に付いている弁護士や当局の反撃に遭い、逆に痛い目を見ることに。

 

結局、ようやくそれに世の中が気付いた時には投資家達は恐ろしい額の損失を叩き出し、個人の中には10万ドル(今の日本円に換算すると少なくとも1000万円ほど)を失った人も出たとのことです。

 

中国企業で儲けようとしたはずが、逆に中国企業のいいカモにされてしまったという哀れな結果で終わってしまいました。

 

勝者がいれば必ず敗者が存在する。資本主義経済の現実を見たように思います。

 

 

投資家は守られない

この作品で語られたのは、米国証券取引委員会や監査法人など、本来上場する企業を監視し市場や投資家を守るために存在する機関は、企業から提出された書類を左から右に流し処理するだけ(実態を調査したりはしない)であるということです。

 

そうして、中国企業を米国に上場させようと考えた『何者か』にまんまと騙され大勢の人達のお金が失われることとなりました。

 

しかし、この事件について責任を問われ立場を追われたり自らの財産を無くした人はほぼ皆無なのです。

 

それどころか、今もどこかでお偉い立場で高給をもらいふんぞり返っている。

 

ここから分かることは、投資家(特に個人投資家)はいつだって食い物にされるリスクを抱えており、たとえ損失を被っても自業自得で終わるんだということです。

 

そして、それを防ぐための役割を負っているはずの人々は何もせず、何か起こっても知らんぷりであるということ。

 

以前ご紹介したインサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実に出てきたお偉い方々と全く同じで、思わず笑ってしまいました。

toushi-wakariyasui.hatenablog.com

 

「私は悪くない。」

これが、本来市場を監視や企業を監視し投資家を守る役割を負った人物の言葉なのですから、もうどうしようもありませんね。

 

 

資本主義経済の犠牲にならないように

作品の冒頭と最後で、こんな言葉が出てきます。

 

資本主義とは何か?経済システムか?あるいは他者から搾取し儲けるために人間が利用する装置なのか。働き者が正しく報われる一方で、他人を利用するものが報われる仕組みでもある。

 

資本主義であることは自由であることですが、同時に搾取し搾取される者が存在する弱肉強食の世界になるということです。

 

そうならないように様々な機関が存在するはずですが、この作品を観るとそれらも結局はお飾りで、自分の身は自分で守れるように常に学び続ける必要があると思わざるを得ません。

 

信じるべきは他人ではなく、自分自身。

 

それが、悲劇を防ぐためのキーポイントだと感じました。

 

 

まとめ

冒頭で「この作品に出演するのは全員悪人だ。」というとんでもない文言が出てきますが、観終わるとそれは間違いではないということが分かります。

 

あまりに自分勝手な人達ばかりなので観ていて気持ちの良いものではありませんが、自らの保身と利益に囚われた人間がどんなものなのか、反面教師にする意味ではとても役立ちます。

 

また、投資をする上で信じるべきものは何なのかを教えてくれる作品でもあると思います。

 

作品の最後で、財産を失った人達が出てきますが、彼等の表情を見ているとやるせない気持ちになります。

 

彼等と同じ轍を踏まないためにはどうすればいいのか。この作品から教訓を得ることをオススメします。