裁かれるべきは誰だったのか『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』の感想

皆様こんにちは、takahiroです。

 

2011年に公開されたドキュメンタリー映画、『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』を観ました。

 

ドキュメンタリー映画を観るのは初めてだったのですが、フィクションではない現実だからこそ考えさせられることがたくさんあり、内容もあのリーマン・ショックを題材にしたものでとても勉強になりました。

 

本日は、この映画の感想を交えてリーマン・ショックとは何だったのかという個人的な見解をお話していきます。

 

 

起こることが必然だった

世界的な大不況を招いたキッカケはリーマン・ブラザーズという投資銀行が倒産したことにあったのかもしれませんが、映画を観ていて思ったのは「大量の火種があった中でトドメの着火を迎え、リーマン・ショックという結果になった」だけでないかということです。

 

規制緩和・サブプライムローン・デリバティブ・CDO・CDS。

 

放っておけばいつか必ずそのツケが回ってくることは明確なのに(それを指摘した人もいたのに)、当時の金融界のお偉いさん達はじめ業界人は、目の前に転がる莫大な利益しか見ず、何とかしようという考えは皆無だったことがよく分かりました。

 

おそらく「何かがあっても、ツケを払うのは自分ではない」と他人事のように捉えていたところもあったのでしょう。

 

みんながやってガッポリ儲けているのに、自分だけ真面目にやってバカを見ることはしたくないというのは人間の性かもしれませんが、それでも自分自身が『ガラクタ』と評するものを顧客に売りさばくという行為について、どんな心境でやっていたのか気になるところです。

 

どんなにオイシイ果実も、吸い尽くせばいつかは無くなるという当たり前のことに失った後からしか気付けない人間の愚かしさが、観ていてとことん感じられました。

 

 

罪に問われることも裁かれることもなかった大物達

劇中のインタビューに出てくるのは、そのほとんどが当時の金融界を席巻していた立場ある大物でしたが、事実はハキハキ答えるのに自分に都合の悪い話に触れたり、追い詰められそうになると途端に「話す気はない」や「そうは思わない」や「あと3分で終わりなのだからまともな質問をしてくれ」などとはぐらかしたり逃げたりするところに、あの世界的不況の真実は今後も永久に闇の中なんだろうなと否応なく思わせてくれました。

 

そんな彼等は何の罪にも問われず、当時得た莫大な利益も没収されることなく、今も社会的立場のある役職でのうのうと暮らしています。

 

一方で、職を失い貯金を失い家を失った人々は、毎日をどう生きようか必死になっています。

 

世の中は平等ではないなんて分かりきったことですが、それでもこれを観ていると責任も取らずのうのうと生きてる彼等にいつの日か報いが訪れますように、と祈りたくなります。

 

お金が集まるところには権力も集まるというのは、本当なのかもしれません。

 

 

搾取される側には立たないようにという教訓

おおもとの原因は金融界の人々による果てしない欲望の暴走でしたが、一方で彼等の口車に乗せられマイホームを購入した人も、100%悪くないというのはちょっと違うのではないかと思いました。

 

いくら調子の良いことばかり銀行員や仲介人から言われたとしても、契約の内容(返済額がいくらなのか等)と現状の自分の収入と状態を照らし合わせて考えれば、後々必ずマズいことになるのは予想がつくものではないでしょうか。

 

もしそれを微塵も感じさせないほどの巧みな話術と精緻な契約書だったのなら仕方ない部分もありますが、おそらくそうではなく、単に自分が組んだローンがどんなものだったのかよく理解しないままマイホーム、という餌に飛びついた。

 

もちろん一番いけないのは問題を放置し続けた提供側にありますが、これに関しては一般市民の方にも落ち度とまでは言いませんが、原因はあったように思います。

 

そうならないために、最低限の金融に関する知識と世の中の情勢を掴んでおくことは必要だなと改めて感じました。

 

 

まとめ

正直、観ていて気持ちのいい作品では決してありません。

 

人間の醜く愚かな面が結構な割合で出てくるので、「何だこれは」と思うかもしれませんが、世界の失敗の歴史を知ることは将来自分が同じ状況に置かれないように、また万が一置かれてしまった際にどうすればいいのか学ぶためにも大切なことです。

 

作品のタイトルであるインサイドジョブ(inside job)は、日本語で『内部の者の犯行』という意味となります。

 

ここで言う『内部の者の犯行』とは何を指しているのか、ぜひ映画を実際に観て考えてみてくださいね。